サラゾスルファピリジンと不妊

潰瘍性大腸炎やクローン病などで処方される薬剤のカテゴリーに「5-ASA製剤」というのがあります。

副作用が少ないことや軽症の患者様で処方が推奨されていることから、我々の界隈では非常に一般的に処方されています。

5-ASAとは「5-アミノサリチル酸」の英語略であり、内服薬や肛門から入れる注腸剤の形があります。

製剤自身も

・5-ASAそのもの+コーティングの工夫がなされているもの

・5-ASAの元物質で体で5-ASAに変化するもの(代謝される)

の2タイプに分かれます。

内服薬であれば

5-ASAそのもの(メサラジン)…ペンタサ🄬、アサコール🄬、リアルダ🄬

5-ASAの元物質(サラゾスルファピリジン)…サラゾピリン🄬

に分かれます。

5-ASAがなぜ効くのか

5-ASAは前述のとおり、潰瘍性大腸炎やクローン病など、自己免疫の病気に使用されます。

50年以上前から使用されており、未だに基本・ベースとなる薬剤です。

しかし、なぜ効くのか、実はその作用機序は明確にはわかっていません。

①PPARγの大腸でのはたらきを強める。PPARγは転写因子としてはたらき、NF-KBの発現を抑えることが知られており、炎症が伝わるのを抑える

②活性酸素を除去する

③アラキドン酸カスケードを抑え、炎症が伝わるのを抑える

などが考えられています。

サラゾスルファピリジンの副作用

サラゾスルファピリジン特有の副作用で男性不妊があります。

男性不妊に関しては40年以上前から既に報告があります(1979. Lancet

精子数の減少、精子の運動性の低下、異常な形態の増加などが記録されています。

これもまたなぜ起きるのかはわかっていません。

①サラゾスルファピリジンが精巣や精巣上体内では活性酸素の除去を邪魔している(結果、活性酸素により精子がダメージを受ける)

②サラゾスルファピリジンが男性ホルモン(テストステロン)分泌を抑制する

といった仮説が考えられています

 

対策

このサラゾスルファピリジンの男性不妊に関しては、2-3か月薬をやめることで復活します。一過性の現象です。

また、メサラジンでは男性不妊の報告はありません。

なので、もしサラゾスルファピリジンの使用で安定している男性で不妊を気にする場合は、メサラジン製剤に変更するのがよいと考えられます。

また、サラゾスルファピリジンによる女性不妊の影響はいわれていません。

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