ロキソプロフェンが潰瘍性大腸炎を悪化させるかどうか

ロキソプロフェン(loxoprofen, 商品名ロキソニン®)は既にOTC(over the counter, 処方箋なしで購入できる薬)となり、一般に広く知られる薬となりました。

ロキソプロフェンは解熱効果・鎮痛効果にすぐれており、もちろん医療の世界ではよく使われる薬剤です。NSAIDsと分類される薬剤の代表的な薬です。アラキドン酸カスケードという経路を阻害すること、炎症を伝えることを抑制します。

潰瘍性大腸炎は「潰瘍」を作る「大腸」の「炎」症を来す疾患です。有効でよく使われる5-ASAがアラキドン酸カスケードを抑えるという説もあり、ロキソプロフェンはどちらかと言えば潰瘍性大腸炎を改善させそうな気もしますが、実際はどうでしょうか。

 

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Avoiding medications that worsen symptoms — Pain relieving medications that contain nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDS), such as ibuprofen (sample brand names: Advil, Motrin) and naproxen (sample brand name: Aleve), are not usually recommended if you have ulcerative colitis. These medications can worsen symptoms. If you need to take a pain reliever, acetaminophen (sample brand name: Tylenol) should not affect ulcerative colitis symptoms.

と記載されており、症状を悪化させる可能性があるためNSAIDsは使用すべきではないとされています。腹痛に対して症状を抑えたい場合はアセトアミノフェン(カロナール®など)が安全だろうとされています。

NSAIDs使用と、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の関連を調査した論文(J Clin Gastroenterol. 2016 )があります。

潰瘍性大腸炎・クローン病とも40%程度の患者がNSAIDsを使用していました。

高頻度(月5回以上)NSAIDsを使用していた場合、クローン病は症状が悪い患者が多かった。

一方で、潰瘍性大腸炎は影響を受けなかった。

とされています。

 

NSAIDsの胃腸への影響

NSAIDsはアラキドン酸カスケードを阻害することで、組織の血流が減少します。すると、十分なはたらきを胃腸ができなくなり、潰瘍を作ることがあります。胃潰瘍が有名ですが、十二指腸・小腸・大腸でも起き得ます。あるいは腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性も考えられています。そのため、炎症性腸疾患に悪影響を及ぼす可能性があります。

一方で、IBDが悪くなったから腹痛が生じ、痛み止め(NSAIDs)を内服していたという可能性があります。上のデータでもかなり多くの人がNSAIDsを内服していました。NSAIDsを飲んだからIBDが悪くなったのか、IBDが悪くなったからNSAIDsを飲んだのか、見分けがつかないというわけですね。

本論文では元々症状が落ち着いていた人に対してNSAIDsを使用した場合どうなるか、という時間軸での検討です。なので、NSAIDsがクローン病を悪化させる可能性が示唆されています。

 

今回はクローン病と潰瘍性大腸炎で結果が異なりました。NSAIDsの潰瘍は小腸に多く大腸は少ないので、クローン病の方が影響を受けやすいのかもしれません。

 

ただし、NSAIDsは痛い止めとしてだけではなく、血栓の予防として内服される場合も多いです。アスピリンを心筋梗塞や脳梗塞の再発予防に内服する場合が一般的ですが、予防の方が重要だと思うので、相談の上使用していくことが望まれます。

 

 

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