大腸カメラの質について

大腸カメラの質とは

大腸癌は癌の中で

発症:総合1位(男性3位、女性2位)

死亡:総合2位(男性3位、女性1位)

と非常にポピュラーな癌です。

大腸カメラは大腸癌の確率を減らすことが知られているので、人間ドッグなどでは積極的に行われています。

しかしただ単に「奥まで行って帰ってきた」だけでは、検査をやった意味がなく、質の高い検査であったかどうかが重要です。

求められる検査の質

アメリカの消化器病学会では大腸検査に関してのクオリティについて基準を設けています(Gastroenterology. 2021 Aug;161(2):701-711.)

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特に病気が予想されていない外来での検査やポリープ切除後の定期チェックを念頭にしています。

 

  1. 綺麗な前処置(最低90%以上、理想95%以上が前処置良好)
  2. 盲腸到達率(最低90%以上、理想95%以上が最奥に到達)
  3. 観察時間(最低6分、理想9分以上観察に時間をかける)
  4. Adenoma detection rate(最低30%、理想35%以上)
  5. Serrated lesion detection rate(最低7%、理想10%以上)
  6. 併発症(施設で正しくモニターされていること)

が求められます。

観察ですが、大腸検査は奥(盲腸)まで行くときには観察せず、奥から引き返してくるときに観察します(引き抜き)。なので、検査時間ではなく、引き抜いてくる時間が重要になります。

どれだけ早く奥に到達できたかは、検査者の満足度には関わりますが、検査者の寿命を延ばす効果はありません。

 

Adenoma detection rate (ADR) とは

大腸カメラの検査の質を測る上で最も一般的な指標です。

「無症状の検査者に大腸カメラを行ったときに、大腸ポリープが見つかる確率」になります。

厳密な定義(NEJM, 2014)では

無症状…ポリープや大腸癌切除後ではない、10年以上大腸カメラを受けていない、便潜血検査は陰性である、腹痛・鉄欠乏性貧血・胃腸からの出血・体重減少・排便習慣の変化・他の検査で腹部に異常が指摘されている・憩室炎・炎症性腸疾患がない

とされています。

また、ここでいう「Adenoma」は一般的に「大腸ポリープ」に近いですがやはり厳密にはInternational Classification of Disease, 9th revision (ICD-9)という国際分類で決められており、日本でいう早期癌も含んでいます。

通常「便潜血で引っかかった」とか「便秘がある」とかで検査を受けるので、日本の病院でADRを計算することは非常に難しいことがわかります。もし安易に計算できているとしたら、それは計算方法を理解していません。

Serrated lesionは大腸ポリープの一種で、比較的発見が難しいとされているポリープです。これを用いた検査の質は未だ証拠不十分といったところです。

 

 

 

 

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