大腸カメラの観察時間とポリープ発見率の差

下部消化管内視鏡、いわゆる大腸カメラは消化器内科医のルーチンワークです。

一方、患者様からすると一生で数回しかない、緊張の一瞬です(一瞬でもないか)。

できる限り早く終わってほしいと思うものだと思います。

どのくらいかかるのか、と聞かれることが多いですが、これはやってみないとわかりません。

患者様の体型は全員異なり、全く同じ方法で入れていくことはできません。

同じ患者様でも、その日のコンディションや下剤での効果(洗腸状況)により難易度が異なります。

大腸カメラは主に、往路はできるだけ早く奥に行き(終末回腸や盲腸)、抜いてくるときにポリープを発見したり、切除などの処置を行っていきます。

<早く終わればいいのか>

Just a moment...

では早く終わる医師が優秀か、というとそうではありません。

見落としが増えるからです。

 

こちらは2006年のNew England Journal of Medicineですが、この論文が発表されて以降、挿入してから6分程度の観察時間(withdrawal time)を取ることが推奨されています。

熟練医による2000例あまりの大腸カメラ検査について、6分以上の観察時間・6分未満の観察時間に分けて、結果を比較しています。

これによると、6分以上の観察時間では腺腫・早期癌が28.3%、進行癌が6.4%見つかったのに対して、6分未満だと腺腫・早期癌が11.8%、進行癌が2.6%しか見つかりませんでした。

つまり、6分未満だと観察が早すぎて、見落とす可能性があるということです。

しかも、リカバリー可能な腺腫・早期癌だけでなく、進行大腸癌でもかなり差がついていることに危険性を感じます。

早く観察を終えると、進行大腸癌ですら半分は見落とされているのです。

※消化器内科医は早く挿入できるかを競争する傾向にありますが、挿入が早い人は患者様の苦痛が少なくなる傾向があります。ただし、ポリープがたくさん見つけられるわけではありません。

 

大腸カメラの意義は小さなポリープを含め、切除すべき病変を見つけることにあります。

大腸カメラで一番奥まで行って帰ってくるのは、手段であって、目的ではありません。

検査が早く終わってほしいのは人類共通の望みだと思いますが、検査が早くて見落としてしまうよりはじっくりみてもらった方がいいと思うのは、検査者側のエゴでしょうか。

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