胃底腺ポリープをフォローする意味

胃にはピロリ菌という細菌が住み着くことがあります。

この菌が慢性炎症を起こすことで、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ひいては胃癌の原因になると考えられています。

よって、昨今はピロリ菌がいると判明次第、除菌する流れが確立していると思います。

ピロリ菌を除菌するかどうかは

①胃カメラで胃炎など、ピロリ菌がいるせいで起きている異常を捉える。胃癌がないかを確認しておく。

②血液検査や呼気の検査等で、ピロリ菌がいることを確定させる。

 

胃カメラだけでピロリ菌が「おそらくいる」「おそらくいない」ということは、様々な所見(画像での異常)から判断つきますが、「絶対いる」「絶対いない」というところまで断定することはできないことになっています。

 

<胃底腺ポリープ>

胃カメラで得られる画像のうち、「胃底腺ポリープ (Fundic gland polyp, FGP)」というタイプのポリープがあれば、ピロリ菌が「おそらくいない」と予想できます。

ポリープといっても、大腸にできるポリープと、胃にできるポリープは全く原因などは異なります。

胃にできるポリープのうち、「胃底腺ポリープ」とタイプは放置の対象になります。

理由は以下の2点です。

①胃底腺ポリープは癌化することがない、と考えられているから

②ピロリ菌がいないため、他の胃の病気(潰瘍、癌など)になることがないから

ゆえに、「幸せのポリープ」と言われていた時代もありました。肌感覚としては、ピロリ菌がいない健康な人の半数以上にみられる気がします。

ただし、度々、「胃底腺ポリープを定期的にチェックする」目的で胃カメラを毎年受けている人が見受けられます。

これには意味があるのでしょうか?

 

<胃底腺ポリープと癌化>

家族性腺腫性ポリポーシス(Familial Adenomatous Polyposis, FAP)の患者様では胃腸のそこら中にポリープができます。

胃にも多数のポリープができますが、タイプは胃底腺ポリープになります。

FAPでできる胃底腺ポリープは癌化する可能性があるので、チェックが必要でしょう。

 

一方で大多数でみつかる、遺伝性疾患ではない(sporadic)胃底腺ポリープに関してはどうでしょうか?

今のところ、胃底腺ポリープから発癌したことが報告された症例は世界で6例のみです。(Clin J Gastroenterol 2;279–283;2009, Clin J Gastroenterol 13;740–745;2020など)

胃底腺ポリープの頻度が世界で何億あるかはわかりませんが、2015年で世界で43億人がピロリ陽性という推測があり(Gastroenterology 153;420-429;2015)、2015年の世界人口が73億人であったことから、およそ30億人はピロリ陰性と考えられます。

胃底腺ポリープの頻度は不明です。20%としても、15億人以上に胃底腺ポリープがあるわけで、報告されているのが6例しかないと考えると、無視していいレベルだと思われます。

「胃底腺ポリープが癌化する」ことを心配して胃カメラを毎年受ける行為は無意味だといっていいいでしょう。

※それ以外の目的に関してはまた投稿したいと思います。

 

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