市販薬のロキソニンで潰瘍は起きないのか?

ロキソプロフェン(ロキソニン)はひょっとすると、日本で最も有名な消炎鎮痛剤/解熱剤かもしれません。

炎症を鎮め、痛みを取り、熱を下げる。

おそらく日本に処方したことのない医師はいないと思いますし、2011年からは第一三共ヘルスケアから市販薬(ロキソニンS)(Over The Counter, OTC)としてドラッグストアでも買えるようになりました。

ここではロキソニンSの成分について取り上げます。

ロキソニンSの愛用者の方、説明が求められている先生方、ご覧ください。

 

ロキソニンと消化性潰瘍

ロキソニンはNSAIDsというタイプの消炎鎮痛剤になります。

そしてNSAIDsの副作用に胃十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)があることもまた、知らない医師はいないと思います (Armstrong CPBlower AL Non-steroidal anti-inflammatory drugs and life threatening complications of peptic ulceration. )。

潰瘍は深くえぐれていくと、埋もれている血管が切れて、大出血を来します。

私もロキソニンをはじめとするNSAIDsによると思われる消化性潰瘍をひたすら診続けてきました。

従って、多くの場合、制酸剤と一緒に処方されることが多いです。

 

しかし、市販薬発売後10年が経つものの、市販薬のロキソニンSでの潰瘍は目にしたことはありません。

医師の処方ではないので、制酸剤を一緒に購入するケースは少ないのではないかと思うのです。

なのでリスクはあるように思われるのに、なぜか見かけません。

 

ロキソニンSについて

第一三共より添付文書を引用します。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/package_insert/pdf/loxonin-s_1.pdf

ロキソプロフェンが60mg含まれており、医師の処方と同じ用量です。

添加物も、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、三二酸化鉄、乳糖水和物、ステアリン酸マグネシウム、と全く処方薬と同じになっています。

プロドラッグとのことですが、今まで処方されていたロキソプロフェンも同様にプロドラッグです。

なお、ロキソニンSにはいくつかのラインナップがありますが、中には酸化マグネシウムを含んだロキソニンSプラスという薬剤があります。

NSAIDs潰瘍に対して、有効な(エビデンスがある)制酸剤はMisoprostol(サイトテック), PPIs(プロトンポンプ阻害薬), 高用量H2RA(H2ブロッカー, ガスターなら40mg/day)です(AJG, 2009)。プラスしたとしても有効性は保証されていないことは理解しておく必要があります。

 

従って、ロキソニンSを内服した時の消化性潰瘍のリスクは処方薬と同じということになります。

「ロキソニンS」の内服が原因で消化性潰瘍になった患者様に出会っていないのは、

・長期連用していない

・胃カメラするほどのひどい潰瘍になる前に、内服を止めている(したがって確認できていない)

・単なる経験不足

など、色々な要素が考えられると思います。

 

雑記

処方薬は薬手帳や電子カルテで把握できますが、市販薬や健康食品は管理するツールがありません。

OTCが増えてきている現在、市販薬や健康食品まで確実に問診する重要性が高まっているのかもしれません。

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