急性胆嚢炎で胆嚢はなぜ腫れるのか?

よくある病気、急性胆嚢炎に関する疑問を扱います。

初期研修医、消化器修練医向けです。

 

急性胆嚢炎とは

胆嚢は肝臓の下にくっついている臓器で、肝臓から出る消化液(胆汁)を一時的に貯蔵している臓器です。

そこの炎症である急性胆嚢炎は非常に一般的な病気で、緊急手術に関して虫垂炎の次に多いです。

胆嚢にはよく結石が溜まります(胆嚢結石)。

ここでは胆嚢結石を原因とする、最もポピュラーな急性胆嚢炎を扱います。

胆嚢結石が胆嚢の出口を塞ぐ(嵌頓)することで、内部に胆汁が溜まって腫脹することで痛みが生じます。そして内部に菌が入ってしまうと、出ていくことなく増殖して、感染を引き起こします。

そこで疑問が一つ。

なぜ胆嚢に液が溜まって腫れているのか。

病因を考えてみると、胆石の閉塞だけでは完全に説明できないと思います。
なぜなら、胆嚢管や胆嚢頸部で胆石が嵌ってしまうと、胆石によって胆汁が出ていかないのと同時に、胆汁が入っていくこともできないからです。

 

原因

マウスの実験では、胆嚢管を結紮したら、それだけでは胆嚢炎は発症しないことが報告されています。
しかし、胆嚢の表面にダメージ(直接こすったり、化学物質による刺激)が与えられた後に胆嚢管を結紮すると、胆嚢炎を発症しました。
最初に軽度の炎症が起きると、lysolecithinやProstaglandinE2, F1などが産生され、炎症がさらに悪化します。

一方で、最初に嵌頓するまで溜まっていた胆汁は胆嚢壁から吸収されます。
急性胆嚢炎を来した胆嚢内部の胆汁は色素が薄いことが多いです。
これはビリルビンが胆嚢壁から回収されていることの証拠です。
また、胆嚢内に粘液が分泌されていることによると考えられます。

胆嚢内に分泌される粘液が、胆嚢炎により更に多量に分泌されます(Am J Pathol. 2006;169(6):2031-2041.; Gut Liver. 2016;10(5):851-858. )。
既報ではMUC2, MUC3, MUC5AC, MUC5Bといった粘液が、胆嚢炎により過剰産生されると報告されています。
少なくとも一部の粘液(MUC5AC)は炎症で惹起された、TNF-αやEGFによって制御されているようです。

結論

以上をまとめると、胆嚢炎の機序としては

① 胆嚢結石が胆嚢管や胆嚢頸部に嵌って胆嚢炎を発症する
② 胆嚢炎になると、胆嚢から粘液が過剰産生される
③ 更に胆嚢が腫れて、胆嚢炎が余計悪化する

という流れになります。

雑記

胆嚢が結石に塞がれると、粘液が胆嚢壁から産生される。
本来は胆嚢結石を洗い流し、感染した胆汁を洗い流すという、合目的な働きのような気がします。
実際、小さな砂や泥レベルが詰まっていた場合は、自然に改善させているのかもしれませんね。

 

 

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