消化器の先生向けのテーマです。
胃カメラをしていて、「食道乳頭腫」という病変もよく見つかります。
これは昨日の投稿でいうと、「良性」の「腫瘍」になります。
食道の表面(上皮)の細胞が異常増殖しているものの転移のおそれはない、状態です。
食道乳頭腫はよく見つかりますが、今後の胃カメラのペース・方針として「年1回の定期チェック」にしていました。
本当に定期的にチェックする必要がある、チェックするのであればどのくらいのペースがよいのか再検討したいと思います。
食道乳頭腫(Esophageal squamous papilloma)とは
改めて大雑把なまとめを
<内視鏡所見>
・胃カメラの0.43%程度にみられる(実際はもっと多い印象だが・・・)
・食道にできる腫瘍
・食道の中では中部食道と下部食道にできやすいが、どこでもできうる
・2-5mm程度
・ポリープ状、桑実状、イボイボしている
・白色光で白っぽい
・表面は重層扁平上皮に覆われているが、下の増殖帯が乳頭状に変化している
<原因>
化学的・機械的刺激・・・特に胃食道逆流症(GERD)、胃酸の逆流による刺激が原因の可能性
ウイルスによる刺激・・・ヒトパピローマウイルス(HPV)
食道乳頭腫のうち10%程度がHPV陽性であったとの報告あり(Acta Histochem Cytochem.2006)。
HPVに関しては子宮頚癌と同じで、癌化しやすいタイプ(食道乳頭腫ではセロタイプ16)のHPVとそうでないタイプのHPVにわかれます。
食道乳頭腫で陽性のHPVは、どちらのタイプの感染もあると報告されています。
一方で90%はHPV陰性であり、単純にHPVだけでも説明できないことになります。
定期チェックの必要性について
なぜ定期チェックするのか?
定期チェックする必要性はどこにあるかというと、癌化するかどうか、その1点にあります。
「良性」だった食道乳頭腫が「悪性」の食道癌に変わる。
その可能性がどのくらいあるのかを文献から考察したいと思います。
これらの文献をみると、食道乳頭腫が食道癌になることはありますが、稀であることがわかります。症例報告されている者は世界で合わせても5例程度です。
食道癌が進行すると、元の良性の部分は殆どみられなくなるので、進行食道癌の一部には由来が食道乳頭腫だったものもあるのかもしれません。
食道癌の30%がHPV陽性という報告もあるので(Scientific World Journal,2014)、定期フォローは必要だと思われます。
ただし、癌化の頻度は低いと思われますので、年1回が妥当なペースだと思われます。
雑記
食道乳頭腫は上記のように小さいので、通常検査の生検鉗子で殆ど取ることができます。
なので、生検検査が可能な人であれば、胃カメラのついでに切除することがいいと思いました。
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